引越し時の敷金返還

引越し後に原状回復範囲外の敷金を取り戻す方法

敷金

敷金返還に関連するトラブルは非常に多く、賃貸物件を利用する人々の大きな悩みのひとつです。もちろん、借主に非がある場合には、相応の責任を負う必要がありますが、中には身に覚えのない修繕費や清掃費を負担させられるケースも多々あります。こういった予期せぬ敷金トラブルに巻き込まれた場合の敷金を取り戻す方法をご紹介します。

原状回復範囲外の敷金精算に納得がいかない!敷金を取り戻すことはできる?

敷金は、基本的に借主のお金です。「家賃の滞納がない」「故意あるいは過失による傷・汚れ・故障がない」「劣化や消耗が一般的な使用の範囲を超えない」にも関わらず、国土交通省が策定している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の借主に負担義務のない費用が敷金から差し引かれた場合には、その分を取り戻すことができます。同じ理由で敷金の返還がなかった、あるいは追加で原状回復費用を請求されたというケースでも同様です。

ただし、特約で予め原状回復の範囲について記載があり、契約している場合は取り戻すことは難しいでしょう。「借主が一方的に不利な特約」でなければ、その特約で結んだ通り、原状回復を行う必要があります。

敷金が戻らない、追加で支払った割合が約半数

敷金って、普通はどれくらい返ってくるものなの?こういった疑問は非常によく聞かれますが、敷金の回収率や返還額はまちまちです。物件によって使用状況や環境も違うので、一概に「いくら」と決められるものではありません。ただ、ひとつ言えるのは、敷金が全額返還されるケースは少ないというのが現状です。

敷金が返還された割合

一般的な敷金の返還額は、原状回復費用を差し引いた金額となります。問題は、この原状回復費用の請求が正当なものかどうかです。

敷金を返還してもらうための正しい手順

原状回復費用の見積書を見て驚く女性

敷金返還額に納得がいかない時の対処法を、3つのステップでご紹介します。

step1:原状回復費用が妥当か確認し、問題があれば貸主に自分で交渉する

退去時のチェックが終わると、貸主は原状回復を行います。その際に、必要な修繕費や清掃費で、借主が負担するべき費用がある場合には、その詳細が記載された見積書が送られてくるはずです。見積書の内容に納得がいかないようであれば、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を確認してください。もし、明らかにガイドラインに反した修繕費や清掃費が差し引かれている場合には、まず貸主に直接連絡し費用負担を軽減できないか相談してみましょう。

ただ、貸主に連絡する前に、事前に特約で原状回復について結んでいるかどうか、契約書を一度ご確認してください。特約でハウスクリーニングや畳の張替え、鍵交換などについて結んでいる場合は、特約の内容通り、原状回復を行わなければなりません。特約の内容が「借主が一方的に不利な特約」であれば無効にできる場合もありますが、そうでなければ従う必要があります。

管理会社が敷金精算を代行している場合は、先に管理会社と話し合いをします。管理会社との話し合いで解決しない場合は、念の為、大家さんにも直接相談した方がよいでしょう。大家さんの知らないところで、管理会社が勝手に敷金から利益を得ようとするケースもあるからです。

ポイント

交渉する際には、なぜ、ガイドラインに反する費用負担をする必要があるのか、その理由を尋ねるところから始めることをおすすめします。その理由が正当なものでない場合には、ガイドラインに反するため借主に負担する義務はないと主張するとよいでしょう。


理想は貸主と借主で話し合って解決することです。感情的にならず、貸主の気持ちも考慮してなるべく穏便に解決できるよう心がけてください。

step2:内容証明郵便を送る

貸主と話し合っても、折り合いがつかないケースは多々あります。中には、話し合いに全く応じようとしない困った貸主もいます。話し合いで決着がつかないときには、敷金返還請求を内容証明郵便で送ることで解決できる場合があります。

内容証明郵便とは、「いつ」「誰が」「誰に」「どんな」手紙を送ったかを、郵便局が証明してくれるというサービスです。送った手紙は、謄写(コピー)が郵便局で保存されます。内容証明郵便は、あくまで手紙を送ったという事実、手紙を出した日付、送った手紙の内容を証明するものですので、手紙の内容が本当かどうかを証明するものではありません。

しかし、敷金の返還をかたくなに拒否する貸主に対し、ある程度のプレッシャーを与えることはできます。これは、内容証明郵便が決められた形式で発行されるため、法的な効果があるものと思わせることができるためです。実際、内容証明郵便を送付することで、案外あっさりと敷金を返還してもらえる例はたくさんあります。また、万が一裁判になった際には、証拠として充分認められる文書となりますので、そういった意味でも内容証明郵便の発行は有効であるといえるでしょう。

内容証明郵便の書き方

内容証明郵便は、手書きかパソコンで作成します。企業名などの固有名詞を除き、日本語以外の言語を使うことはできません。また、以下のルールに従って作成する必要があります。

決まり

・紙1枚520文字まで

・1行20文字まで

・1枚26行まで

書く内容

・貸主の名前と住所、借主の名前と住所

・借りていた部屋の住所と部屋番号

・預けた敷金の金額

・賃貸契約を結んだ日と、実際に住み始めた日

・賃貸契約の解約希望が聞き入れられた日と契約終了日

・借主が実際に部屋を明け渡した日

・賃貸契約を結んだ日と、実際に住み始めた日

・敷金返還額の見積書が作成された日と見積もり金額

・なぜ借主が負担するべき費用ではないのか(国土交通省のガイドラインに基づき説明)

・借主が貸主に請求する金額と、敷金を振り込んで欲しい口座

・指定した期限までに敷金の返還がなければ、少額訴訟をするという意思

※内容証明郵便は一度送ってしまうと訂正ができません。内容に誤りがないようしっかり確認してから送りましょう。

敷金返還請求書の文例はこちら(飯田橋総合法務オフィス)

http://www.naiyo-shoumei.net/j15.html

内容証明郵便の送り方

以下を用意して、郵便局の窓口へいきましょう。必ず内容証明郵便を送る旨を伝えてください。

必要書類

・送り先の住所が書かれた封筒1枚

・手紙3通(相手に送る分、郵便局が保存する分、自分の控え)

費用 合計:2,000円前後
※配達証明(310円)をつけておくと、いつ相手が受け取ったか分かるのでおすすめです。

詳しくは、郵便局の内容証明のページをご覧ください。

https://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/syomei/

step3:少額訴訟をする

内容証明郵便を送っても解決できない場合、最終手段は少額訴訟となります。少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払いを求める裁判のことです。原則1回の審理で判決が出る裁判で、2ヶ月程度で敷金を取り戻せる可能性があります。

ただし、貸主側が通常訴訟を希望する場合には、通常訴訟に移行する場合があります。通常訴訟では、判決が出るまでに2~3年程度かかると言われており、手間や負担もさらに大きなものとなります。また、裁判に勝てば必ずお金が戻ってくるというものではないということも考慮して、少額訴訟を起こすかどうかを判断する必要があります。

※勝訴しても、結局貸主が敷金を返還しなければ、強制的に支払わせるための手続きが別途必要です。

少額訴訟に必要なもの

少額訴訟をするには、以下の書類などを必要とします。

訴状

貸主の名前と住所、借主の名前と住所、請求の趣旨、紛争の要点、請求の原因、その他参考事項が記載されたもの

テンプレート、記入例のダウンロードはこちら

http://www.courts.go.jp/saiban/syosiki_minzisosyou/syosiki_02_04/

訴状副本 貸主側用の訴状のコピー
証拠 賃貸借契約書、敷金返還額の見積書、国土交通省のガイドライン、内容証明郵便のコピー、清掃費や修繕費などで争点となっている箇所の写真
※証拠は、2通ずつ用意し提出します(裁判所の分と貸主の分)

ポイント

借主側の主張が認められるためには、なんといっても証拠が重要です。たとえば、争点となっている箇所の写真を証拠として提出する場合、退去時と入居時の両方あればより説得力が生まれます。証拠はいかに分かりやすく、裁判官を納得させられるかがポイントです。

少額訴訟にかかる費用

少額訴訟での敷金返還請求に必要な費用は、おおよそ1万円程度と言われています。収入印紙代と郵便切手代です。

手数料 請求金額により異なります。手数料(収入印紙代)は、以下の通りです。
1,000~6,000円
郵便切手代 3,000~5,000円程度です。裁判所により異なります。

少額訴訟の流れ

少額訴訟のおおまかな流れをご紹介します。

流れ

1、借主住所管轄の簡易裁判所に必要書類を提出

2、期日(裁判が行われる日)が決定

3、法廷での審理

4、判決

ポイント

和解で解決することがほとんどです。白黒はっきりさせるよりも、むしろ、和解での解決を狙って、少額訴訟を起こすケースも少なくありません。前にも触れましたが、話し合いで解決できるのが一番です。

自分で対処できないときは敷金トラブルの専門家に相談しよう

敷金トラブルの専門家

敷金トラブルを自分だけで解決することは、非常に大変なことです。専門知識の勉強もかなり必要となりますので、自分だけで対応するのに不安がある場合には、交渉のサポートをしてくれる専門家や交渉代行サービスの利用をおすすめします。

敷金診断士は賃貸の敷金や保証金トラブルに関する専門家

敷金診断士とは、その名の通り敷金や保証金のトラブルを解決する専門家です。解決にむけたアドバイスをもらうことが可能ですので、敷金トラブルで困ったら相談してみましょう。また、第三者の立場で国土交通省のガイドラインや判例などに基づいた原状回復の査定をし、借主に代わって貸主と敷金返還の交渉も行ってくれます。

敷金診断士は退去前、退去後どちらでも敷金返還交渉のサポートをしてくれます。敷金診断士が直接部屋を見て査定できれば査定書、見ることができない場合は意見書を作成することができます。交渉する際には査定書を提示した方が確実です。たとえば、借主と貸主の退去立会いの際に、敷金診断士も一緒にいてもらうのがベストです。診断士が、それぞれが負担するべき費用をその場で公平に提示してくれるため、かなりの確率でトラブルを防ぐことができます。

また、万が一貸主が診断士の査定に納得がいかず、少額訴訟へと発展した場合でも、敷金診断士による査定書が証拠として認められることも多々あります。少額訴訟では、どれだけ有効な証拠があるかも大切です。

敷金返還に関するサポートは引越し業者でも行っている

引越し業者のオプションサービスとして、敷金返還の交渉を代行するサービスが提供されています。引越し業者で提供されているサービスも、敷金診断士による相談、立会い、査定、査定書の作成、交渉代行などです。中には、敷金専門の相談窓口を設けている引越し業者もありますので、無料で利用できるのがあれば、どんどん活用していきましょう。

こんな人には特におすすめ

退去立会いが初めての経験で不安な人や、女性の一人暮らし、貸主に対して不信感をもっている人にはおすすめのサービスです。また、長年住んでいる賃貸から退去する人にも、専門家のサポートは有効です。特に「長年住んだから」という理由で、多額の原状回復費用が請求される場合には要注意です。本来は、長く住んでいるからこそ、より多くの敷金を取り戻せる可能性があります。

行政書士や弁護士への相談について

行政書士でも、退去立会いや現地の調査、査定書の作成などを行ってくれます。また、内容証明書の作成や送付の代行、少額訴訟を起こす際の証拠書類作成の代行なども依頼可能です。必要な場合は、証人として出廷してくれることも。

ただし、その分費用はかかりますので、請求する金額によって依頼する意味があまりない場合もあります。弁護士への相談に関しても同様で、弁護士に代理人として対応してもらうのは非常に心強いところではありますが、依頼料が高額になるのであまり現実的とは言えません。※相談だけであれば、無料で対応してくれるケースは多々あります。

少しでも多くの敷金を取り戻すために大切なのは諦めないこと

少し前の賃貸物件では、貸主が求める費用負担をそのまま受け入れるケースがほとんどで、それが一般的なイメージでもありました。しかし、近年では賃貸物件の原状回復に対する常識が変わりつつあります。原状回復の基準が以前よりも明確に定められ、貸主の間でも、「敷金は基本的に返すお金」という意識が高まっています。それに伴い、敷金の回収率は増加傾向にあります。

もし、敷金精算について明らかにおかしいと思うようなことがあったら、原状回復の基本ルールを確認した上でまずは話し合いをしましょう。もし、話し合いで解決できなかったとしても、泣き寝入りする前にできることはたくさんあります。